◎歴史研究 – 人文・社会科学再興のために(近現代資料刊行会の出版活動)
2001年5月11日「熊本地裁判決」が、ハンセン病患者・元患者に対する国の隔離政策の誤りを認めたことにより、約一世紀にわたるハンセン病者に関る問題の一つに対して一つの解決が提示されました。
しかし差別、貧困、人権などに関る前世紀から持ち越された多くの社会問題は棚上げにされたまま、経済的功利性の大義名分のもと浅薄な合理性と単純化された価値基準に基づきつつ21世紀の社会は前のめりに動きつづけています。経済至上主義と情報化で武装された社会も「人間の営み」の集積であり、社会問題を生み出しつづけているのもまた「人間の営み」の結果です。一見した合理の世界の裏では「問題」を数多く抱えた混沌が未だに横たわり、真の社会的安定と発展のためには障害となっているこうした「問題」の解決と「人間の営み」に真摯に向き合っていく事が必要です。
今、このような社会的問題と「人間の営み」に取り組み、知識の蓄積を行ってきた歴史研究を初めとする人文・社会科学の基礎的研究分野は存亡の危機にあり、経済至上の市場原理が持ち込まれることによって即効性のないと思われがちな歴史研究などがおかれた状況は未曾有の厳しいものとなっています。
ただ、現在のような時代だからこそ、人間の混沌とした面と「歴史」の中で向き合い、社会問題の解決にむけ実証的な検証を重ねてきた歴史研究による「知」のあらためて積極的な展開と普遍化が望まれます。不安へと向かう現代社会の大きな流れに抗するためにも必要不可欠な「知」の体系です。
例えば、私たちの刊行している『日本近代都市社会調査資料集成』に収録されている個々の資料をご覧いただければ、そこにうつしとられている大正、昭和初期当時の社会が驚くほど現在の社会状況と類似していること、現代社会の背景としておおう多くの問題の原型を見出だす事が出来ます。
また、『戦前・戦中期アジア研究資料』の資料の数々の記載の中には、アジアの国々との将来にわたる信頼関係を築いていくうえで、現在その解決を無視することが出来ない事象が残されています。
こうした歴史上の事象を現在の『知』の枠組みで捉え直し、現在そして将来の指針を形成していく歴史研究を推進するための一助として、近現代資料刊行会は良質な資料を利用しやすい形で提供し、研究環境の向上に貢献することを出版の意義と認識し活動を続けています。
過去をみつめた、誠実な基盤の上に立脚した「持続可能な社会」の実現のために、
・近現代資料刊行会では歴史、特に近現代史を中心に、散在している資料を調査・発掘し、体系化し刊行、日本国内外の研究者に優れた資料を提供できるよう利用しやすい形で編集。
・各企画の編集にあたっては、日本近代史はもとより、社会学、社会福祉学、国際関係史、経済史、政治史、教育学、農業経済学、行政学、都市学、建築学、医療・衛生学など幅広い専門家の先生方の協力に基づいて行っております。
ぜひ、既刊情報をご覧下さい
企画・資料に関する情報をご提供下さい
● 重要資料でありながら、容易に利用できない資料の数々……
● なかなか出版として実現化しない、お手元にある企画案……
小社は近代、現代の人文・社会科学を中心とした重要資料の復刻・刊行を通じて学術・研究環境の充実を目指しています。
大出版社にない小さな出版社独自のフットワークの良さでフォローします。
復刻刊行物として具体化したい資料・企画がございましたら、是非ご一報下さい。