昭和期の都市労働者

[1] 東京:日雇・浮浪者(昭和2~63年)

【解説】
本田 豊(東京人権歴史資料館)
岩田正美(日本女子大学教授)
有隣園テント村のルンペン・
昭和6年
◎世界大恐慌とともに始まった昭和。戦時体制下の大戦そして敗戦を経て戦後の占領―高度経済成長からオイルショック。激動の昭和の時代を通し先進工業国の一員となる日本の成長を下支えした様々な労働者たち。経済工業活動の中核となった都市。そこに生きた労働者の置かれた状況と直面した問題を介して、昭和期の経済産業構造の実像、社会政策と労働者、労働者を中心にみた都市社会環境、労働と一個の人間との関係性とはなにかを考察する。
現在グローバリゼーションと「構造改革」のもと、新たに流動化し激変しつつある『労働』ということがらへ歴史としての昭和が大きな問題を投げかけるシリーズの第一弾。
就業前の沖仲仕(アンコ)・
昭和11年
◎昭和期の経済成長と基幹産業を根底から支えながら底辺労働力として周縁に位置付けられた「日雇」「浮浪者」。
劣悪な労働環境、福祉の制度的な対象からの阻害など表出する社会構造の問題、経済、資本、生活、個人と労働の矛盾などを記録された資料により追跡する。
◎昭和期の労働者の主な舞台となった都市、特に日本最大の都市・首都東京における労働・労働者に関して調査、考察した資料で構成。
◎戦前期の資料は、東京市社会局による資料、戦後は東京都労働局・民生局の著した報告書を中心に大学の調査報告書、関係諸団体の資料、ルポルタージュなどを平成の直前まで収録。
◎特に資料の散在と劣化が著しい昭和20年代、30年代の資料が充実。
日雇労働者(紹介)・
昭和29年
・別冊に政策の変遷、浮浪者と日雇の問題の背景に迫る解説論文を収録。
第1回配本:昭和2年~31年 全10巻(第1巻~第10巻)
本体揃価:150,000円(税別)
A5判上製/全4,200頁/ISBN4-87742-829-1
2006年12月刊行/発売中
第2回配本:昭和32年~41年(1) 全9巻(第11巻~第19巻)
日雇労働者(土木労働)・
昭和29年
本体揃価:135,000円(税別)
A5判上製/全3,800頁/ISBN978-4-87742-840-2
2007年2月刊行/発売中
第3回配本:昭和41年(2)~63年 全6巻+別冊1(第20巻~第25巻+解説編)
本体揃価:95,000円(税別)
A5判上製/全3,000頁/ISBN978-4-87742-850-1
2007年4月刊行/発売中
全25巻+別冊1
山谷簡易宿泊所密集地域
日雇労働者の稼動、
収入実態調査より・昭和26年
全巻揃価:380,000円(税別)
A5判/全11,000頁
限定100セット










[2] 大阪:釜ヶ崎・日雇(大正14年~昭和63年)
《図書資料編》第Ⅰ期

【監修・解説】
吉村智博(大阪公立大学都市科学・防災研究センター特別研究員)
原口 剛(神戸大学大学院人文学研究科准教授)
【監修】
白波瀬達也(関西学院大学人間福祉学部准教授)
櫻田和也(大阪公立大学都市科学・防災研究センター特任講師)
あいりん労働公共職業安定所(現在)
◎東京山谷、横浜寿町、名古屋笹島と並ぶ「四大寄せ場」の一つ「地図にない日雇の町」釜ヶ崎。
恐慌、国家総動員体制、敗戦、占領政策、戦災復興事業、高度経済成長 転変する「昭和」を背景に都市大阪とその労働世界の周縁に定着された「地域社会」の労働者・生活者の盛衰を追う。 
◎本資料集は、1926(昭和元)年~1989(昭和六四)年にわたる昭和期を中心にして、主要都市で働く労働者と労働を取り巻く様々な社会問題に関係する資料を集成、復刻するシリーズ『資料集 昭和期の都市労働者』の第二集であり、「大阪」の「日雇労働者」、「釜ケ崎」に関する資料を中心に選定・収録したものである。
釜ケ崎東萩三角公園付近(昭和42年)
◎資本主義的都市化が始動した昭和期前にドヤ街として成立した「釜ヶ崎」。
昭和期を通して都市貧民の生活拠点でありつづけ、「大阪万博」に表象される高度経済成長の時代を迎える大阪の社会経済を下支えした日雇労働者の街。
戦後日本の資本主義が抱える構造的矛盾が凝集されたその姿の表裏を反映する資料群。今回は調査報告、概況書、単行本などの図書資料を収録し、戦前期編、戦後編前期として第Ⅰ期18巻にまとめ刊行する。
◎戦後編においては、行政・研究者の作成した資料のほか「釜ヶ崎日雇労働組合資料」「松繁逸夫資料」
「土田英雄資料」などが保管する機関紙・ビラなどの一次資料を多数収録し労働運動が台頭する熱い時代の「釜ヶ崎」の姿を鮮明に活写する。
◎監修者による近代から現代にいたる「釜ヶ崎」の日雇労働者とその取り巻く状況の展開に関する解説を収録した別冊を付す。
◎第Ⅱ期として1974年以降の史資料を収録した戦後編後期および機関誌類、統計書、逐次刊行物、「釜ヶ崎」を撮影した未公開写真を収録した写真集なを後日刊行し「釜ヶ崎」および大阪の日雇労働者とそのとりまく社会経済的環境の総合的研究資料の提供を目指す。



路上の求人状況(昭和46年)
釜ヶ崎どや街(昭和37年)
簡易宿街(大正10年代)












メーデーデモ行進(昭和46年)
釜ヶ崎暴動(昭和36年8月)
屋内求人状況(昭和46年)












「釜族」創刊号(昭和48年)
釜ヶ崎⇔山谷(昭和47年)
医療ニュース(昭和47年)
救対ニュース(昭和46年)





















第1回配本(戦前期編):大正14(1925)年~昭和19(1944)年 全8巻
セット1:全4巻(第1巻〜第4巻)/
ISBN978-4-86364-498-4 本体揃価:72,000円(税込79,200円)

セット2:全4巻(第5巻〜第8巻)/
ISBN978-4-86364-499-1 本体揃価:72,000円(税込79,200円)

 2017年10月刊行/発売中
第2回配本(戦後編前期):昭和21(1946)年~昭和48(1973)年 全10巻+別冊1
セット1:全5巻(第9巻〜第13巻)/
ISBN978-4-86364-529-5 本体揃価:90,000円(税込99,000円)

セット2:全5巻+別冊1(第14巻〜第18巻)/
ISBN978-4-86364-530-1本体揃価:98,000円(税込107,800円)

 2021年3月刊行/発売中
第Ⅰ期 全18巻+別冊1
全巻揃価:332,000円(税込365,200円)
A5判/全8,200頁
限定80セット

近代大阪の都市周縁  社会 市民・公共・差別


【著】吉村智博(大阪公立大学都市科学・防災研究センター特別研究員)
◎戦前、1920年代に形成された被差別共同体(マイノリティコミュニティ)を取り巻く住居、労働などの諸環境の悪化や失業、恐慌などに起因する制度疲弊への対応は、解決への根本的かつ有効な手段は採用されず、1940年代の統制と規制その後の総力戦体制によって排除や抑圧などの構造的矛盾は放置・再生産され、諸問題の解決への方策はとられなかった。
◎敗戦後、占領期の諸政策の効果をうけ1950年代、特に中盤被差別共同体総体としての質的転換が生じた。その転換の過程にこそ、現代の周縁社会問題の契機の一端が伏在する。都市史研究ではほとんど対象化されない「差別」に基軸をおいてその変容過程を本書では論ずる。
◎この時代を見ずに都市周縁社会を照射してみても、非歴史的・非合理的な要素しか見出しえない。ステレオタイプの周縁社会史像をいったん切り崩し、構築し直された歴史像を提示することによってこそ、現代社会の差別問題の根源への歴史的究明が可能となる。
長柄地区の「不良住宅地区」(1952年)
長柄地区の二十五軒長屋(1950年代)
◎被差別共同体は、近代日本の市民社会がその成立の前提としている公共性(圏)のなかで、いかに位置づけられ、またその状況にいかに対応したのか。被差別共同体の社会的結合様式とその変容過程を通してこの問への答えを見出そうとするのが本書の課題である。
本体価格5,000円(税込5,500円)
A5判上製カバー装 234頁/ISBN978-4-86364-348-2