「閉ざされた島」時間と空間を越え、そこに生きた人びと
石居人也(一橋大学社会学部准教授)
大島青松園が所在する瀬戸内海の大島は、周囲5.5 kmほどの、決して大きくはない島だ。療養所の創設以降、概ね療養所の島として歩んできたその地は、在園者自身によって「閉ざされた島」とも形容される。そんな大島で療養していた人びとの営みは、しばしば交わり、重なりあい、ときにすれ違い、ぶつかりあった。そうした人びとの営みのなかにあったのが、自治や信仰や文芸活動である。それらの活動の中心的な担い手は、しばしば重なりあい、かれらをハブとして園内における人の輪が広がってゆく。また、活動と連動して発行された逐次刊行物は、その輪を活動の内、あるいは療養所の内にとどめることなく広げてゆく可能性をも持ちあわせていたといえよう。そのような逐次刊行物をリプリント発行する本シリーズによって、読者一人ひとりが、時間と空間を超えて、療養所とそこに生きた人びとの営みと「直接」向きあっていただければ幸いである。