華中の在来商工業の実態を明らかに
井村哲郎
「華中の商工業慣行調査」には満鉄上海事務所調査室慣行班が行った華中の中都市の商業、流通業、在来工業などにおける慣行調査報告書を収録した。「支那慣行調査」では戦後『中国農村慣行調査』として満鉄北支経済調査所慣行班の調査報告が刊行されたため、農村慣行調査が有名である。しかし、満鉄調査部が昭和15年度から10 ヵ年計画で行うとした「支那慣行調査」には、農村慣行調査だけではなく、華中の商事慣行調査、華北・華中の都市の都市不動産慣行調査があり、ほかに工業慣行、労働慣行などの調査も行われた。
本資料集に収めた華中の商事慣行調査報告書は、調査の困難さから内容には精粗があるが、日中戦争開始以前の華中の商工業慣行、日本軍支配下の在来商工業の実態を明らかにしている。これらの資料が民国期中国と日本軍支配時期の華中の在来商工業の実態を明らかにする研究の基礎史料として利用されることを期待したい。