欠落した歴史を問い直す
一番ヶ瀬康子長崎純心大学教授
日本の高校までの歴史教育の中で、かつての植民地であった朝鮮、台湾等の歴史は、まったく欠落している。もっとも社会事業自体の歴史が、日本史教育のなかでは無視されてきた。したがって、植民地のそれは、二重の意味で漆黒の影の部分なのである。その在り方を根底から問い直し、改めて史料を集積、公開された今回の努力は、まことに注目すべきものである。さらに今後の韓国など、独立した旧植民地の人々との関係に、日本人一人一人が、厳しい自省をこめ出発点にすべき課題を提出している。貴重であると同時に、21世紀に向かってアジアの国々のお互いの在り方にとっても、まずふまえておかなければならない史料として、注目すべき業績である。
長期に渡る実証的研究の成果
遠藤興一明治学院大学教授
編者の永岡正己教授は篤学の士である。いまだ未開拓の分野を多く残している社会福祉史に岐け入って手堅い実証的研究を長年続けてこられた。この度「植民地社会事業関係資料集:朝鮮編」全55巻の編纂、刊行に情熱をむけて取り組んでいる。「朝鮮社会事業」をはじめ月刊誌を丹念に博捜して取り上げているのは研究上貴重である。近代日本史、あるいは東アジア史、国際比較史を見渡した場合、これまでほとんど顧みられることなく、史料批判の対象となることのなかった大量の原資料を今回、系統的に整理し、適切な解説が付される。解説者も現在考えられる最良の人選である。日本近代史における空白が埋められ、研究上の飛躍的な発展を期待してやまない。
朝鮮近代史を解明する鍵
宮田節子早稲田大学講師
本資料は三十六年にわたる日帝下朝鮮の社会事業の実態に迫る資料を、テーマ毎に分類・編集したものである。この資料集の最大のメリットは、植民地下で自らは記録を残すことのなかった朝鮮の民衆―当時の言葉で「細民」「窮民」「乞食」「土幕民」等々と呼ばれた人々の調査資料が多数収録されていることである。これらの人々の動向こそが、朝鮮近代史を解明する鍵であり、それ故数多くの研究者が関心を注いでやまないのである。本資料集の刊行によって、朝鮮近代史研究は、より本質に迫り、より豊かな歴史像を描くことが出来るようになるだろう。又本資料集の解説には、気鋭の研究者が当っている。その解説は必ずやそれぞれのテーマについての、的確な問題提起となることと期待される。
日本社会事業史-真の全体像理解のために
吉田久一日本社会事業大学名誉教授
私は日本社会福祉の国際性を考察する際、かつての植民地下の社会事業を除いては語れないと主張してきた。今回近現代資料刊行会の手で、その「朝鮮編」が刊行されることは喜ばしい。リストを一覧しても、総督府関係ばかりでなく、地域資料も集められている。また分野も救貧事業から私設社会事業に及び、社会教育や軍事援護にも目配りされている。編集解説も友人永岡正己氏をはじめ、専門家が当てられている。この資料集が多くの人びとに読まれ、日本社会事業史の本当の全体像を理解されん事を祈りたい。
アジアを視野に入れた社会福祉
岡本民夫同志社大学教授・歴史資料館館長
近年国際化が進むなかで、アジアを視野に入れた社会福祉研究の立ち遅れが目立つが、この間隙をうめる貴重な資料が選定・収録されたことに敬意を表するとともに積極的な活用を期待したい。
大切な空白を埋める
小倉襄二新島学園女子短期大学学長
日本社会事業史にとって大切な空白を埋める。私も〈右翼と福祉〉戦時厚生政策につよい関心があり、この刊行を心より推薦したい。
生活実相を明かに
小沢有作日本植民地教育史研究会代表
植民地時代の朝鮮の子どもの生活実相を明かにしてくれましょう。教育に対しても光をあててくれます。
意義深い史料集
糟谷憲一一橋大学教授
植民地期朝鮮の社会社会事業に関するまとまった史料集であり、その刊行は意義深い。
過去の事実が等身大に
姜 徳相滋賀県立大学教授
過去を直視するには過去の事実が等身大に見えてこなければなりません。事実を記録した文献が復刊されて多くの人の共有の財産になることは重要なことです。
日本における障碍者問題史にも不可欠
清水 寛埼玉大学教授
他民族を侵略する国々には国民の自由と人権の保証も無い。日本帝国主義の植民地・占領地の人民と日本国内の「障碍者」等が受けた人権侵害と差別の史的事実はそのことを指し示している。本資料集は日本におけるハンセン病者を含め障碍者問題史をアジア・太平洋諸国の民衆の生活史・人権史の中に位置づけとらえていこうとしている筆者にとっても不可欠な基本史料である。
第一次資料の系統的研究の価値
瀧澤秀樹大阪商業大学教授
植民地時代の朝鮮社会の研究は先験的結論を前提としない、第一次資料の系統的研究が不可欠の時代である。尹氏の研究を通して、私もこの資料集の価値を教えられた。
朝鮮近代社会の実相を具体化
堀 和生京都大学大学院教授
歴史学の研究が大きく飛躍する時には必ず新史料の発掘が伴なう。朝鮮近代社会の実相を具体的に明らかにすることは今日の重要な研究課題である。本資料集に収録されている諸史料は、そのような研究の要請に応える貴重なものだと考える。
民衆の生活実態を探る
吉野 誠東海大学教授
植民地期における朝鮮民衆の生活実態を探るうえで、本資料集の刊行は大変意義深いものと期待いたします。
推薦します
浅田喬二[駒澤大学教授]
池川英勝[天理大学教授]
海野福寿[明治大学教授]
*推薦者の肩書き等は1999年当時のものです。