愛知県・底辺社会史資料集成 部落篇

【全3巻】明治期・大正期・昭和期

【編著】
松浦國弘(愛知学院大学教授)
【推薦】
秋定嘉和(大阪人権博物館館長/池坊短期大学名誉教授)
小倉襄二(同志社大学名誉教授)
丹波正史(全国地域人権運動総連合議長)
永岡正己(日本福祉大学教授)
◎刊行に当たって
名古屋絵入新聞
明治十八年七月廿五日
米騒動後、各府県や市に設置された社会課により底辺社会(部落等)の社会調査が随時行われるようになり、その成果によって今日でもその社会に呻吟していた多くの人たち生活状況の一端を窺い知ることができる。
しかし騒動以前の底辺社会に生きる人たちの生活状況を知る術は科学が進歩した今日といえども皆無に近いといってよい。唯一あるとすれば当時の新聞の社会面の記事に期待するしかないが、それでも部落などの底辺社会の記事が報じられているのだろうか、というむしろ疑問の方が先立った。しかし、論より証拠、とりあえず一紙から始めた新聞閲覧ではあったが、そこには私が想像していた以上に多くの記事を見ることができた。
以来、県下で刊行された数十種の新聞の社会面が報じるそれらの記事に見せられて三十有余年、まだまだ見残した多くの記事もあろうかと思うが、それでも明治、大正、昭和戦前期のジャーナリストが底辺社会をどのように見、どのように報じてきたか、また市民がその社会をどのように見ていたのか、という一端を窺い知ることができるのではないかと思う。
「時代を写す鏡」といわれる新聞に、今一度光を当て、愛知県という一地域の「点」の資料の発掘だけでなく、限りなく時間と労力を要する作業ではあるが、各地で同様な資料の発掘が行われ、それが点から「面」へと広がっていくことを期待した。それによって今後「メディアによる底辺社会史(貧困史)研究」という新たな研究視点が確立されていくことができれば、編集者として望外の喜びである。
                           (松浦國弘)

◎「愛知県・底辺社会史資料集成」の特色
名古屋新聞
昭和二年三月廿九日
1.1872(明治5)年より1943(昭和18)年にわたり愛知県下で発行された、ほぼすべての新聞*を精査し部落に関わる記事を中心に、その周辺事項の記事も含め収集・収録。収録にあたり、新たに活字を組みなおし年代順に記載。
2.収録記事は、直接的な部落関連記事だけでなく、差別事件、職業、労働、教育、芸能・文芸、医療・衛など多岐にわたる。
3.当時の愛知県の部落関連の出来事を解説した「概説」、テーマによる「記事索引」を付す。

*記事を収集した新聞
「名古屋新聞」(文明社)「愛知新聞」「額田県彊記聞」「愛知週報」「愛知日報」「愛岐日報」「官報雑誌」「名古屋新聞」「新愛知」「東海新聞」「名古屋絵入新聞」「絵入扶桑新聞」「扶桑新聞」「金城新報」「金城たより」「愛知絵入新聞」「愛知新報」「扶桑新聞」「中京新報」「三遠日報」「参陽新報」「東海日日新聞」「知多日報」「新朝報」「尾三新聞」「豊橋日日新聞」「名古屋毎日新聞」「豊橋新報」「東海朝日新聞」「豊橋大衆新聞」「豊橋同盟新聞」「中部日本新聞」等。
全3巻
全巻揃価:38,000円(税別)
B5判上製/全1,144頁/ISBN978-4-87742-766-5
2008年9月刊行/発売中