差別にまつわる近現代史の潜流の解明と検証
小倉襄二
永年にわたる松浦國弘愛知学院大教授の研鑽、検証による『愛知県・底辺社会史資料集成部落篇』の刊行を心よりお慶び申し上げます。松浦さんは同志社大卒の社会福祉研究者であり私の大切な知己でもあります。私たちの研究室でも、京都・滋賀などの部落調査にかかわりましたが松浦さんは終始、ライフワークとして定点観測のように愛知の部落史研究に集中されてきました。底辺という指向、差別にまつわる近現代史の潜流と、とくに愛知地方における実態と遷移の解明・検証は必須の分野でありました。このたびの集約刊行はこの研究関連にとってきわめて重要な資料という外ありません。広く深い関心のなかでいぜんとして解明と対応を求められている部落問題研究にとっての基本資料として推薦するものです。
戦前の愛知県の部落問題の解明を推し進める条件が整った
丹波正史
私と松浦國弘さんとは40年余りの付き合いである。彼は、その頃から県下のの図書館などに赴き、当時の新聞を片っ端から閲覧し、気が遠くなるような作業を通じて、明治、大正、昭和戦前期の70余年間の愛知県下の部落問題資料をまとめあげた。こうした作業は、口で言うほど容易なものでなく、忍耐と執念に支えられてこそ、日の目をみることができる。松浦さんの部落問題と歴史探求への情熱に心より敬意を表したい。
愛知県は、西日本地方と異なって、部落問題関係資料が少なく、松浦さんの努力によって初めて戦前社会の県下の部落問題の様相と実態、これに伴う事件や運動の内容を知ることが可能になった。基礎資料の整備なくして研究の深化を図ることはできない。この貴重な資料をもとに、戦前の愛知県の部落問題の解明を推し進める条件が整った。
私は、松浦さんのこうした努力に感謝し、この資料集が多くの人びとの学習と研究の素材になればと思っている。心より推挙したい。